出産経験のある女性の約7割の方が妊娠中や産後に痔になったといわれています。
今までなったことがなくても、妊婦になって初めて痔になる方もいます。
そこで今回、もし痔になっても恥ずかしくて誰にも聞けなくて悩むなんてことのないように、妊婦さんがなりやすい痔の種類や痔になった時の対処法を紹介します。
★痔になる前に対処法を知っておきたい
痔の原因とは?
痔は人には言いにくくて、病院に行くのを検討するのも躊躇するかもしれません。
今まで痔になったことがない方にとって、なぜ痔になってしまったのか見当もつかないでしょう。
でも実は妊娠ならではの原因があります。
原因1.子宮の肥大
妊娠中期から後期になると次第に子宮が大きくなり、正常な大きさの2~3倍になることもあるため、子宮が腸を圧迫して腸や肛門の周辺に大きな圧力がかかります。
すると腸から肛門にかけての血行が不良になり、血液が血管に溜まりうっ血してしまうため、痔ができやすいのです。
腸が狭まるせいで便がどうしても溜まりやすくなるのが妊婦さんにとっての負担と言えるでしょう。
原因2.ホルモンバランスの変化
妊娠すると体内では子宮内膜を柔らかくしたり、その子宮内膜で受精卵の着床性増殖を誘起し、妊娠を維持させたりするのに必要なホルモン黄体(プロゲステロン)の分泌が増えます。
この黄体ホルモンで乳腺の発育が促進する一方で、水分の貯留でむくみやすくなり、腸の動きを抑制されやすくなるため、便秘を起こしやすくなり、痔の原因となります。
原因3.血行の悪化
子宮が肥大化するだけでなく、つわりや倦怠感の影響から食事が思うようにとれず、栄養バランスが崩れることによって血流が悪くなり、痔につながることも。
さらに、お腹が大きくなるとどうしても運動量が減るため、血液の循環が悪くなり、痔の症状を悪化させる場合があります。
原因4.排便時のいきみ
原因1~3までで便秘になりやすいということがおわかりいただけるでしょう。
つまり、便秘によって排便時にいきむことによって肛門周辺の皮膚が裂けたり切れたりしてしまい、痔核ができてしまうのです。
妊娠する前からもともと便秘体質だった方は、分娩時のいきみで痔になる方が多いです。
産後に痔になる理由は分娩時のいきみなどで肛門に大きな負担がかかり、痔が起きやすくなります。
肛門の内側にできてしまった痔は、いきみが増すと肛門から飛び出す脱肛になってしまうこともありますから要注意。
なりやすい痔はどんな種類があるの?
妊婦さんが便秘になりやすいことで痔ができやすいということがわかりました。
では具体的にどのような痔になるのでしょうか。
妊婦さんの多くが経験する痔は「いぼ痔」と「切れ痔」といわれています。
1.いぼ痔 痔核
子宮が大きくなって、肛門周辺が圧迫され、分肛門まわりの静脈がうっ血して腫れてできるのがいぼ痔です。
いぼ痔には、肛門の内側にできる「内痔核(ないじかく)」と外側にできる「外痔核(がいじかく)」があります。
■内痔核
痛みをほとんど感じないケースが多いですが排便時に出血があって、場合によっては重症化すると歩くだけで脱肛する人もいます。
症状の度合い
■外痔核
肛門口の付近の外側に硬い異物のようなものができます。
出血は少ないですが、知覚神経がありますので痛みがあり、重症化すると椅子座ることもままなりません。
妊婦さんの体は分娩時の出血を止めやすくするために妊娠中は血液を凝固させる物質が増える関係上、血管内で血栓ができやすくなり、これが外痔核を生じさせやすくなります。
2.切れ痔 裂肛
排便時に強くいきんで便を出そうとして肛門周辺の皮膚が切れたり、裂けるのが切れ痔です。
肛門の皮膚が切れる状態で「裂肛」(れっこう)ともいいます。
下痢から肛門周辺の皮膚がただれることで切れ痔になる場合もあり、切れ痔は排便するたびに皮膚が切れたり、裂けたりして痛みを感じます。
便秘の人は切れ痔の悪化や慢性化の恐れもありますので、たいして出血していなくても排便時の痛みがひどいなら、切れ痔の可能性も高いしょう。
3.あな痔 痔瘻
肛門周囲から侵入した細菌が炎症を起したり、化膿することであな痔ができます。
排便時でなくても膿が溜まっている周辺に違和感を感じ、膿が外に流れ出ることがあります。
なかには発熱を伴い、激しい痛みを感じる場合もありますので要注意です。
いかがですか?
今あなたが悩んでいる痔の症状に似ているものはありますでしょうか。
現在、自分の痔がどういう状況になっているのか分かるだけでも不安は軽減し、対処がしやすくなります。
決して恥ずかしがらずに自分の痔と向かい合うことが大切です。
痔の予防法や対処法は?どうやって治せるの?
予防法や対処法を前もって知っておくと痔になりにくいですし、なったとしても軽い症状ですみますよ!
便秘を解消することがポイントになります。
★予防法★
食物線維や水分を十分に摂りましょう
食物繊維や水分の摂取を心がけてほしいですが、強い便秘には効果がないこともあり、食物繊維の過剰摂取がかえって便秘を悪化させることもあります。
推奨摂取量を超えない範囲で利用しましょう。
野菜や果物、キノコや豆、イモ類、海藻などの食事から、豊富な食物繊維を積極的に取り入れるとよいでしょう。
適度な運動をしましょう
適度な運動によって腸内が活性化し、滞っていた便が刺激されます。
母子に影響がない範囲での適度な運動は血行促進に良いですので、散歩やマタニティヨガなど試してみてください。
肛門まわりの血行をよくすることが大切です。
★対処法★
薬での治療
痔が比較的軽度の場合は薬による保存的治療が勧められ、うっ血や浮腫、腫脹といった症状であれば軽減させるため軟膏や坐薬を使います。
現在、授乳中でも使えるステロイドが入っていない(非ステロイド)痔疾薬がありますので、長期に連用する方、症状が軽度な方などには穏やかな効き目が好評のようです。
肛門を温めましょう
痔のうっ血を悪化させないためには、肛門周辺の温浴が大変効果的です。
症状が和らぐためには併せて清潔に保ち、感染を防ぐことも重要になります。
痔の手術
肛門科で診てもらい、痛みが強い場合には座薬の使用が勧められることが多いですが、重症の場合は手術が検討されます。
痔の種類や症状の程度しだいで麻酔の範囲が変わり、日帰り手術になるか、入院して手術を行うかが異なってきます。
妊娠中でも母体に負担がかからない姿勢で手術は可能ですが、手術は麻酔の影響を考えて安定期に入ってからであったり、手術できる時期が限られたりします。
痔がひどいとどうなるの?
悩んだら病院へ行きましょう。
下血や排便時の出血が続く場合、場合によっては痔ではなく大腸癌などの他の病気である可能性も否定できません。
取り越し苦労になっても構いませんので、気になる点がある場合は恥ずかしがらずに相談や治療を受けることが大切です。
まとめ
妊婦さんなら自然と便秘になりやすく、痔ができやすいことが分かりました。
自分だけではありませんので、ぜんぜん恥ずかしく思うことはありませね。
痔の予防には、妊娠前から便秘にならないように生活習慣や食生活を心がけることも大切です。
痔になったときも症状が悪化する前に、早めの対処を心掛けましょう。
痔の症状が軽ければ予防と対処法を実践して、もしひどい場合は一度お医者さんに相談してみましょう。
痔の症状が悪化する前に行動してくださいね。